冬眠中の寝言

雪が降ったら引きこもる。これぞ人の生きる道。
食料はこうなることを見越して買い込んできたから余裕。
寝て寝て腹が減ったら餌を食う。
まるでシマリス君のような生活。
 
ところでシマリス君というと、保育園の頃に読んだ童話が思い出されます。
シマリス君とエゾリス君」みたいな話でした。
あらすじはこんな感じ。
昔のことなので若干違うところもあるかもしれません。
 
冬眠するシマリス君と、冬眠しないエゾリス君。
秋、シマリス君は冬眠に備えて食べ物を集めます。
そして集めた食べ物と一緒に地面に潜り、冬眠します。
「おやすみエゾリス君。春になったらまた会おうね」
こうしてシマリス君は眠りにつきました。
冬。一方のエゾリス君は食べ物が無くて困っています。
そして雪の上をさまよい、ふと穴を掘ってみると、なんと地面からドングリが!
「あ!これはシマリス君が埋めたドングリだ!!」
エゾリス君。九死に一生を得てこのドングリで食いつなぎ、冬を越します。
そして春。シマリス君が冬眠から目覚めて地上に出てきます。
「おはようシマリス君。もう春だよ!」
季節はすっかり、春。二人はこうして再会しました。めでたしめでたし。
 
さて、これを初めて読んだのが年中。
多分5才ぐらいの頃だと思うのですが、未だにそのときの衝撃が忘れられません。
 
シマリス君のドングリをエゾリス君が食べちゃった!」
 
もう少し年が言っていれば
 
「おはようシマリス君。」じゃねーだろコラ!
 
とか突っ込んでるところです。
童話のやさしくあたたかい世界だったから良かったものの、
もしこれが厳しく冷たい自然界だったらシマリス君、命に関わってます。
シマリス君、夜食のプリンを弟に食われたときの俺よろしく怒ってもいいはずです。
でもシマリス君は笑顔。
「おはようエゾリス君。ほんとだ、タンポポが咲いてるよ」とか言っちゃってます(多分)
そんなエゾリス君が僕はずっと嫌いでした。
"習性"という概念を知った小学校中学年ぐらいまで、エゾリス君を悪者だと思ってました。
 
が、そんな幼き日の出来事を粉々に打ち砕く出来事が起きたのです。
それは帰省中の正月。実家のコタツでぬくぬくテレビを見ているときでした。
NHKの自然ドキュメンタリーに、エゾリス君が出てきたのです。
「あー、ホントに冬眠しないんだー」と雪の上を駆けるエゾリス君を眺めていたときに、その事件は起きました。
 
 
なんと、エゾリス君が穴を掘ってドングリを取り出しています
 
思わずはっとして画面に見入ると、ナレーターがこう説明します。
 
 
エゾリスは、冬に備え秋のうちに餌を地面に埋めておきます。
 こうして冬、それを掘り出しては食べるのです。」
 
私は驚愕しました。
エゾリス君は、自分でドングリを埋めるのです。
シマリス君の食料を取って食べるというのは、幼き私の誤解だったのです。
どこでどう勘違いしたのかは不明ですが、エゾリス君は無実だったのです。
 
私はエゾリス君に謝罪しました。
それはもう、冬眠もせずナニも考えずにただ人の餌を食うバカリスとか思ってたこの15年ぐらいの日々をまとめて謝罪しました。
 
ごめんよエゾリス君。
 
 
そしてブラウン管では何も知らないエゾリス君がまたドングリを掘り起こしていました。
エゾリス君。冬はまだ長いけど、負けないでね・・・。