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ゴー屋襲撃

朝起きたら、僕の部屋にゴー屋がいた。
僕「やあ、おはよう。なんにする?」
ゴー屋のマスターが僕に聞いてきた。
僕「なにがあるんだい?」
僕「なにがって、うちはゴー屋だよ?ゴーヤコーヒー以外あるわけ無いだろ」
どうやらさっきの質問は社交辞令で、マスターは僕の希望を聞く気がないらしい。
僕「とりあえず寝起きだし、コーヒーでも飲むといい。」
僕「うん。そうだね(それしかないし)。
  とりあえず寝起きだし、濃い奴を頼むよ」
僕「ああ、分かってる。
  粉をスプーン1杯余分に入れればいいんだろ?」
さすがマスター。僕の好みをよく分かっている。
マスターがコーヒーを入れている間、僕はマスターの視線でその様子を眺めていた。
ゴーヤ入りといっても、挽かれた豆の外見は普通の珈琲とかわらない。
臭いも、普通の香りが飛んだ市販の珈琲豆だ。
 
マスターが少しのお湯でドリッパーを蒸らす。
もちろん粉は少しもふくらまない。
ふくらまない粉は学食の冷めたみそ汁と同じくらいげんなりするよね、とマスターに話しかけると
学食に文句を言えるだけみそ汁の方がいい、と返された。
成る程。責任転嫁は重要だ。
 
蒸らし終えて抽出に入るマスター。
ゴーヤコーヒーは余所で売られているパック詰めされた豆同様にお湯の抜けがとても悪かった。
僕「マスター、僕トイレに行きたくなったんだけれど」
僕「俺もだ。だがもう少し待て。抽出が終わるまで。」
僕「抜けが悪いからまだしばらくかかりそうだよ。」
僕「分かってる。だが抽出の途中で離れるわけにはいかない。」
そんな会話をしながら、のろのろと抽出される黒い液体を眺める僕ら。
僕「まあ、こんなもんだろう。行っていいぞ。」
ドリッパーを上げながら、マスターが僕に許可をくれた。
僕「ありがとう、行ってくるよ。」
僕「安心しろ。俺も行く」
トイレに行った後、コーヒーをカップに移して部屋へ戻る。
 
僕「とりあえず濃いめに入れてみた。今後の参考に感想を言って欲しい。」
僕「ああ、じゃあいただくよ。」
しっかりと濃くはいったコーヒーを口に運ぶ。
いきなり飲み頃の温度だ。カップの暖め方が足りなかったのかもしれない。
僕「昨日より酸味が気になるね。」
僕「濃く入れたからな。雑味も強くなるだろ。」
僕「苦味は横に広がる感じ。良いとも言い難いけれど、悪くはない。」
僕「ごく一般的なコーヒーの感想と何が違うんだ?」
僕「何も違わないよ。はっきり言って、言われなきゃゴーヤなんて分からない。」
僕「まあ、そんなもんだろう。フレーバーコーヒーじゃないんだから。」
やれやれ、と僕は思った。
結局普通のコーヒーと何も変わらないんじゃないか。
でもまあ、飲めない味じゃなかったことだけ、良かったと考えるべきか。
僕「うまいコーヒーが飲みたければ、他を当たってくれ」
僕の考えを察したマスターが諦めたように言った。
僕「ごめんよ。マスターを責めてる訳じゃないんだ。」
僕「だが満足できないのは事実だろう。」
僕「まあ、確かにね。」
僕「俺のせいでも、君のせいでもない。
  ただ、お互いのニーズが合致しなかっただけさ。」
僕「お互いのニーズ、か。
  いつか、うまくマッチしたらいいね。」
僕「なかなか簡単にはいかないだろうけれど、そうだね。」
僕「大丈夫さ。たかが一杯のコーヒーだもの。そのうちうまくいく。」
 
気が付くと、出かける時間になっていた。
僕「とりあえず、出かけよう。」
僕「ああ、そうだね。」
僕「研究室では僕がコーヒーを入れるよ。」
僕「うん。よろしく頼む。”普通の”コーヒーをね。」