森博嗣 冷たい密室と博士たち

 

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

冷たい密室と博士たち (講談社文庫)

 
S&Mシリーズの第二作。
本来は森氏の処女作だが、出版の都合で二作目に改筆されたとか。
そのせいか、一部前作「すべてがFになる」と比べて違和感を感じる点も。
具体的な箇所は、ちょっとしたネタバレにつながる恐れがあるので言わないけど。
(でも本編やトリック自体に影響を与える違和感ではないので気にしないのがよいかと)
 
今回も叙述トリックが冴えている。
あんまり細かく言うとネタバレしそうなので多くは語らないが、
ストーリーとトリックを中心に据えて考えると意外な犯人。
ミステリー小説であるということを念頭に据えて考えると妥当な犯人。
本文中の伏線とか犯人の心境とかそういった面倒な要素を排除すれば(トリックや動機は別にして)比較的早く犯人には行き着くかも。
 
そしてどうでもいいが、前半でふと抱いた印象が犯人の動機の根拠となったあたりが個人的には驚きであり、満足。
誰もが持ってる数値情報を見ると、無意識に差を計算してしまう最近の習慣がどうも災い(?)した模様。27...妥当な線ではあります。
何言ってるかわからない人は本作を読めばだいたい見当つくでしょう。
読んでないのになんのことか見当ついた人は、読めばそれなりに楽しめるでしょう。
読んだのになんのことか見当つかない人は、もう一度読みましょうw
 
・・・と、まるで作者の後書きにありそうな言い回しをしてみる。
 
最後に犀川が探偵臭く回りくどい解説するあたりは冗長でいけ好かないが、
それ以外はとてもスマートな構成だと思う。
次作にも期待。